|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【一般演題口演】
塩酸リトドリン投与中に発作性上室頻拍を発症し,急速に心不全症状を呈した妊娠24週の一例
秦 利衣, 木村 博昭, 秋山 文秀, 新井 未央, 神下 優, 羽生 裕二, 平敷 好一郎, 神山 正明
国保君津中央病院産婦人科
【緒言】塩酸リトドリンは選択性の高いアドレナリンβ2作用薬であり,切迫早産治療薬として使用されている.一方で,アドレナリンβ1,β2作用による副作用があり,慎重投与を要する.今回,塩酸リトドリンによる切迫早産管理中に,発作性上室頻拍(PSVT)を発症した一例を経験したので報告する.【症例】症例は36歳,0経妊0経産.妊娠23週3日,頻回な腹緊を自覚し前医受診.頸管長28mmに短縮あり,切迫早産の診断で入院管理となった.塩酸リトドリン持続静注33γより治療開始するも腹緊消失せず,130γまで徐々に増量し投与を継続.妊娠24週0日,点滴開始より5日目の夕方,突然の頻脈(HR 200回/min)あり,呼吸苦とSpO2 91%(r/a)の低下を認めた.塩酸リトドリンを早急に中止し当院へ母体搬送.来院時,頻脈(HR 212回/min)は継続しており心電図にてPSVTを認めた.血圧は84/57mmHg,SpO2は91%(r/a)と低下,呼吸数は33回/分と上昇し,胸部レントゲンで肺うっ血像を認めた.心臓超音波で壁運動低下や弁膜症は認めなかった.息こらえ,頸動脈マッサージを行うも効果なく,母体にATP製剤12mgを静注したところ速やかに洞調律(HR110回/min)に復帰した.呼吸苦は徐々に改善し,血圧は107/77mmHg,SpO2は97%(r/a)に上昇.切迫早産に対しては,MgSO4 1g/hを治療開始し腹緊は徐々に消失.その後不整脈の出現なく現在も順調に妊娠継続している.【結語】塩酸リトドリンのアドレナリンβ1作用である心拍数上昇により,PSVTが惹起されたと思われた一例を経験した.塩酸リトドリン使用時には,潜在的に頻脈性不整脈の素因のある妊娠女性への投与の可能性を念頭に置き,母体心拍数を慎重に観察する必要性があると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
422-422, 2014
|