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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【一般演題口演】
妊娠中にS状結腸間膜窩ヘルニアによるイレウスをきたした一例
岩根 枝里子, 中島 義之, 林 美佐, 丸田 佳奈, 秋山 美里, 田代 英史, 和田 真沙美, 山代 美和子, 正岡 直樹
東京女子医科大学八千代医療センター母体胎児科・婦人科
内ヘルニアは全イレウスの約1〜2%を占め,さらにS状結腸に関連する内ヘルニアは内ヘルニアの約5%と極めて稀である.今回,妊娠中にS状結腸間膜窩ヘルニアによるイレウスをきたした一例を経験したので報告する.症例は35歳,1回経妊0回経産.既往歴・手術歴に特記事項を認めない.妊娠35週3日に上腹部痛を認め,切迫早産の診断で前医に入院し,塩酸リトドリンおよび胃粘膜保護薬の内服投与を行ったが,腹部症状は改善せず,当院へ紹介となった.初診時,子宮収縮と子宮頸管長の短縮を認めたため,塩酸リトドリンの持続点滴を開始した.嘔吐が強く,腹部単純X線写真で小腸niveau像を認め,腸閉塞と診断された.血液検査上,絞扼性イレウスなどを示唆する所見はなく,腸閉塞を増悪させる可能性がある塩酸リトドリン投与を中止し,保存的加療の方針とした.入院3日目に再度腹部症状が増悪したため,腹部CT検査を施行し,左側腹部に小腸イレウスを認め,外科的治療が必要と判断し,妊娠35週6日に緊急イレウス解除術および帝王切開術を施行した.児は2,940gの女児でApgar score 7点/9点(1分値/5分値),臍帯動脈血液ガスpH 7.301であった.児娩出後に腹腔内を検索し,S状結腸間膜窩ヘルニア門(約2cm)へ小腸が嵌入した内ヘルニアと判明し,腸管壊死所見は認めず,イレウス解除およびヘルニア門の閉鎖を行い,手術を終了とした.術後経過は良好で,術後8日目に母児とも退院となった.妊娠中のS状結腸間膜窩ヘルニアによるイレウスは,きわめて稀な疾患であるが,妊娠中に原因不明のイレウスを認めた際には本疾患も鑑別に上げる必要がある.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
424-424, 2014
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