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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【一般演題口演】
ドクターヘリ搬送を行った未受診墜落分娩の一症例
服部 響子, 望月 純子, 古江 明子, 遠藤 真一, 吉村 嘉広, 松澤 晃代, 島岡 享生, 関口 和企, 石川 隆三, 河野 照子, 金井 雄二, 海野 信也
北里大学病院周産母子成育医療センター産婦人科
【緒言】当院は神奈川県周産期救急システムの基幹病院で,担当地域は市街地から山間部にまでおよぶ.今回,未受診妊婦の墜落分娩症例にドクターヘリ搬送を行ったので報告する.【症例】18歳,0経妊0経産,未婚.最終月経は不明で,いずれの医療機関も受診していなかった.山間のパートナー宅で墜落分娩し,1時間後に救急隊を要請した.救急隊現着時,児は啼泣・筋緊張・皮膚色とも良好で正期産児(後の計測で3226g)と思われた.母体は顔面蒼白で血圧:68/45mmHg,脈拍数:125回/分とショックバイタルを示していた.当院で搬送受入を決定したが,当院まで直線距離で30km離れており,救急隊よりドクターヘリを要請.搬送中フライトドクターが母体の静脈ルート確保および晶質液のポンピングを行い,当院到着時の血圧は110/70mmHg台まで回復していた.児はタオルで保温,到着時の体温は32℃,血液ガスpH:7.14,base excess:-15.4mmol/Lで直ちにNICUに入室した.児の血液培養より黄色ブドウ球菌が検出され,日齢13日目まで抗菌薬を投与,日齢17に退院した.ドクターヘリの出動要請からヘリコプタ収容までの時間は19分,当院収容までは39分,患者からの救急要請から当院収容までは76分であった.【考察】ドクターヘリ搬送は,搬送時間の短縮,傷病者と医療者との早期接触が可能というメリットがある一方で,新生児の低体温や飛行高度に応じた酸素濃度の低下が問題となる.墜落分娩の場合には母児の別施設への搬送も考慮対象となることがある.搬送症例の選別,連絡系統や受入方法について産科医,小児科医,救命救急医,救急隊と綿密なシミュレーションを行い,認識を共有することが今後の課題と考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
434-434, 2014
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