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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【一般演題口演】
多発脳梗塞を来した卵巣癌の2例
櫻井 理奈, 中川 俊介, 瀬戸 理玄, 手島 映子, 生井 重成, 一瀬 隆行, 川田 龍太郎, 笹森 雪文, 松本 泰弘, 竹下 茂樹, 梁 栄治, 綾部 琢哉
帝京大学医学部附属病院産婦人科
【緒言】卵巣癌は婦人科悪性腫瘍の中で最も血栓症合併頻度が高い.深部静脈血栓症(DVT)発症率が病理組織型により異なることから,卵巣癌組織において産生される血液凝固促進因子が関与している可能性も考えられる.今回我々は卵巣癌と診断し手術を予定としていたが手術直前に多発脳梗塞が判明し,治療方針を再検討せざるを得なかった2例を経験したので報告する.【症例】症例1:45歳.卵巣癌stage3cが疑われていたが,術前の血液検査で凝固異常を認めたため,下肢静脈超音波検査を施行したところ,DVTを認め,同日からヘパリン投与開始.その後視野欠損が出現.頭部MRI画像上多発脳梗塞を認めた.腹水細胞診で腺癌細胞を認め,化学療法を開始したところ,凝固異常は改善し,視野欠損は回復している.症例2:70歳.卵巣癌stageIaがうたがわれていたが,入院時に血液凝固異常を認め,下肢静脈超音波検査の結果DVTを認めた.ヘパリン投与およびFFP投与で凝固能改善を認めたため,手術予定としたが,手術当日早朝起床時に転倒.頭部CTで多発脳梗塞を認めたため手術を延期.低分子ヘパリンを投与し凝固亢進状態回復後,手術を施行.病理診断にて漿液性腺癌grade2,stageIaと診断された.現在術後化学療法中である.【考察】卵巣癌に伴う術前発症の血栓症は通常骨盤内の深部静脈に起こるが,多発脳梗塞を認めることもある.早期の癌であってもTrousseau症候群をきたす可能性があるため,血液凝固異常をともなう悪性腫瘍では,積極的に脳MRI等の検査を施行する必要があると考えられる.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
436-436, 2014
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