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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【一般演題口演】
トキソプラズマ特異的IgM抗体測定による妊婦トキソプラズマスクリーニング
司馬 正浩, 瀬戸 理玄, 櫻井 理奈, 生井 重成, 堀 晋一郎, 鎌田 英男, 梅澤 幸一, 松本 泰弘, 笹森 幸文, 木戸 浩一郎, 梁 栄治, 綾部 琢哉
帝京大学産婦人科
【目的】トキソプラズマは流早産や先天性トキソプラズマ症の原因となる人獣共通感染症の一つで,近年感染の機会が増加している.妊婦に対するスクリーニングは手法の不確実性,地域による潜在的な陽性率の違いなどが影響し,実施率に大きな地域差がある.これまでのPHA法による抗体スクリーニングが提供中止になったのを機会に,当院ではインフォームド・コンセントを得てIgM抗体測定によるスクリーニングを開始し,その有効性・問題点を検討した.
【方法】対象は,妊娠初期にIgM抗体測定によるスクリーニング検査を行い,妊娠12週に達している56症例とした.IgM抗体価を,標準値の「0.8未満」,慢性感染の可能性が高いとされる「1.8以下」で分け,0.8未満をA群,0.8以上1.8以下をB群,1.8より高いものをC群とした.
【結果】A群は52人(92.9%,陰性と判断),B群は3人(5.4%),C群は1人(1.8%)であった.B群には「初回採血時の分とのペア血清での2〜3週間後のIgG抗体検査」(再検査)を行い,IgG抗体価の4倍以上の上昇の場合にIgG avidity測定(精査)を計画(0人)し,他は経過観察(3人)とした.C群には再検査施行と平行して精査も計画し,アセチルスピラマイシンの予防内服を開始した.
【考察】この判定基準を用いると,陽性率は比較的高いが精査まで計画する率は低く抑えられる.C群には早めに精査を計画でき,また,B群の大部分を占めると推定されるpersistent IgM症例に対する精査や治療の施行をある程度回避できていると考える.一方,感染既往歴を判定できないため,未感染者に対する初感染予防のための啓発対象症例を同定することができない.偽陽性への留意も必要である.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
454-454, 2014
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