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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【一般演題口演】
腫瘍マーカーの急上昇により悪性転化を強く疑った子宮内膜症の一例
佐伯 直彦, 吉田 敬三, 大谷 利光, 鴨澤 千尋, 北岡 江里, 北岡 芳久, 白石 悟
那須赤十字病院産婦人科
【緒言】子宮内膜症は経過中に悪性転化する事があり,腫瘍マーカー採血や画像検査により経過観察する場合が多い.今回我々は,子宮内膜症の経過観察中にGnRHa療法に反応しない急激な腫瘍マーカー上昇から悪性転化を強く疑い手術を施行するも,病理診断で悪性所見を認めなかった症例を経験したため報告する.【症例】42歳女性.2経妊2経産.子宮内膜症および左卵巣内膜症性嚢胞に対して腫瘍マーカー採血,画像検査により2年間外来で経過観察していたが,CA 19-9 309.7ng/ml,CA 125 172.7U/mlと上昇を認めた.経腟超音波検査では左卵巣の内膜症性嚢胞に著変無く,明らかな悪性所見を認めなかった.月経痛の増悪も見られ,症状緩和目的にGnRHa投与を5回行ったが,投与終了後の採血でCA 19-9 1814.9ng/ml,CA 125 1348.2U/mlと急激な腫瘍マーカーの上昇を認めた.MRI画像上は左卵巣の内膜症性嚢胞は縮小傾向で悪性所見を指摘しえなかったが,臨床経過から悪性転化を強く疑い単純子宮全摘術,両側付属器切除術,大網部分切除術を施行した.術中所見では左卵巣の内膜症性嚢胞が破裂しチョコレート様の嚢腫内容が大網表面に付着していた.肉眼的には嚢腫に隔壁肥厚や充実部分など明らかな悪性所見を認めなかった.病理診断は子宮内膜症の診断で,悪性所見は見られなかった.術後のCA 19-9およびCA 125は低下傾向を示し,ほぼ正常化した.【結語】今回我々は,子宮内膜症の経過観察中GnRHa療法に反応しない急激な腫瘍マーカー上昇から悪性転化を強く疑い手術を施行するも,病理診断で悪性所見を認めなかった一例を経験した.子宮内膜症の悪性転化有無の判断には慎重を要すると再認識させられる症例であった.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
457-457, 2014
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