関東連合産科婦人科学会
会員ログイン 代表挨拶
総会・学術集会
学会誌
定款
公告
利益相反
役員構成
事務局案内
求人施設一覧
関連リンク

 関東連合産科婦人科学会会誌 オンラインジャーナル

<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る

【原 著】
治療抵抗性重症ITP合併妊娠の管理について


岡本 三四郎, 松田 秀雄, 笹 秀典, 古谷 健一, 菊池 義公
防衛医科大学校産科婦人科


 妊娠中に発症したITP(Immune thrombocytopenic purpura)(特発性血小板減少性紫斑病)は妊娠中に良好なコントロールを得た上で児を娩出することが肝要であり,分娩様式を含めた明確な周産期管理方針が必要とされる.今回妊娠36週にて急激に増悪する血小板減少症にて母体搬送され,治療抵抗性であったが適切な周産期管理により無事児を娩出できた症例を経験したので報告する.〔症例〕30歳,1経妊0経産.急激に増悪する血小板減少症にて,妊娠36週1日に母体搬送される.直ちに骨髄穿刺を施行し,ITPと診断された.ヴェノグロブリン20g/day,プレドニン20mg/day,血小板輸血を開始した.断続的に血小板を輸血するも,血小板数は増加せず,ヴェノグロブリン投与の効果は懐疑的であった.母体および胎児脳MRIを施行し,脳内出血なきことを確認した.非周期的な子宮収縮が出現したため,陣痛発来した場合の分娩様式が論点となった.経腟分娩時の胎児頭蓋内出血の危険性と,帝王切開時の大量出血,子宮摘出の危険性との両方が考えられたため,臍帯静脈穿刺(percutaneous umbilical blood sampling=PUBS)を施行した.胎児血液ガス,胎児血液型に併せて,胎児complete blood countを得,Hct 44.0%,Plt 22.0万と血小板数の減少が認められなかったので経腟分娩の方針とした.また,この際,超音波検査にて羊水過少と,胎児中大脳動脈/臍帯静脈RI比の低下が見られたので,人工羊水を注入した.陣痛発来し血小板20単位を輸血しながらの分娩となった.分娩第2期にて遷延一過性徐脈が頻発したため,手術室にて吸引にて急速墜娩した.2,430g Apgar 2/6の女児を得た.産後2時間で母体出血総量は500mlであり,子宮収縮は良好であったが,産褥12時間で母体血小板数は3.4万と急速に低下したため,ステロイド大量療法を開始した.妊娠中に発症したITPでは複雑な原因が想定され,発症機転に即した治療を直ちに施行しかつ効果を得るのは難しいとされる.妊娠前よりITPと診断され加療を受けている症例に比較して予後が悪いという報告も見られ,集学的,集中的な周産期管理の必要性が強く示唆された.

Key words:ITP, 骨髄穿刺, 血小板輸血, 臍帯静脈穿刺

日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(1) 55-59, 2003


一般社団法人関東連合産科婦人科学会事務局 〒102-0083 東京都千代田区麹町4-7 麹町パークサイドビル402 株)MAコンベンションコンサルティング内
TEL:03-3288-0993 FAX:03-5275-1192 E-mail:kantorengo@jsog-k.jp
Copyright (C) 一般社団法人関東連合産科婦人科学会