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第105回学術集会(平成15年6月8日)

【特別講演1】
産婦人科臨床のためのQOL評価


池田 俊也
慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室


 QOL(Quality of Life)は「生活の質」「生命の質」などと訳され,その基本的な概念は,1946年にWHO(世界保健機関)が提唱した健康の定義,すなわち,健康とは「完全な肉体的,精神的及び社会的福祉の状態であり,単に疾病または病弱の存在しないことではない(昭和26年官報掲載)」に遡ることができる.
 QOLの構成要素としては,身体面,精神面,役割・機能面,社会面,霊的・宗教的側面(スピリチュアリティ)などがあげられる.しかし,臨床現場や疫学研究では,基本的に患者の健康状態に直接起因した事柄のみを対象として測定することが多く,この場合,特に健康関連QOLと呼ばれる.
 健康関連QOLを定量的に測定するための尺度の開発が進んできており,健康を多次元的に測定する「プロファイル型尺度」と,完全な健康を1点満点・死亡を0点とした効用値を測定する「選考に基づく尺度」に大きく分けられる.プロファイル型はさらに,症状インデックス尺度,包括的尺度,疾患特異的尺度に分けられる.
 プロファイル型包括的尺度として国際的によく用いられているSF-36は,身体機能,心の健康,日常役割機能(身体),日常役割機能(精神),体の痛み,全体的健康感,活力,生活機能の8領域,計36問で構成される.SF-36は日本の国民標準値が公表されており,各疾患や病態によってQOLがどの程度影響を受けているかを国民標準値を基準として検討することができる.
 効用値測定尺度であるEQ-5Dは,移動の程度,身の回りの管理,ふだんの活動,痛み/不快感,不安/ふさぎ込みの5領域について,それぞれ3段階で評価を行う.EQ-5Dにおける243通りの回答パターンに対して,日本における一般集団の価値付け(効用値換算表)が公表されており,患者の健康状態の評価だけではなく,医療資源配分の判断にも活用することができる.
 臨床現場では,延命を最優先に考えてきた現代医療に対する反省として,患者の立場に立って,苦痛や障害の緩和といったQOLの側面に焦点を当てることの重要性が認識されるようになってきた.婦人科領域においても,治療効果やケアの質を評価する場合に,生存率や臨床検査値の改善といった旧来の指標だけではなく,患者自身が感じ報告する健康状態を加味することが重要であると考えられる.現在,骨粗鬆症,子宮内膜症,悪性腫瘍などではQOL評価が国内外で試みられており,今後,他の婦人科疾患においても健康関連QOL尺度の利用が進展するものと期待される.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2) 140-140, 2003


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