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第105回学術集会(平成15年6月8日)

【シンポジウム2】
妊産婦の薬物療法を再考する―有効性と安全性の確立を目指して―
4.薬剤投与に関する法的諸問題


古川 俊治
慶應義塾大学外科・TMI総合法律事務所(弁護士)


1.薬剤副作用に関する医療過誤
 最高裁判所は平成8年1月23日,「医師が医薬品を使用するに当たって添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項に従わず,それによって医療事故が発生した場合にはこれに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り,当該医師の過失が推定される」と判示し,一般医師の常識的慣行に従っていたとしても医師は責任を免れないことを明らかにした.これによって,薬剤添付文書(能書)が医師の過失推定の基準となることが明確にされた.この判決以降,無顆粒球血症や中毒性皮膚融解壊死症など,添付文書には記載があるものの,希な薬剤副作用について,副作用発見の遅延や副作用発生時の受診指導に関して医師の責任が問われている.一方,治験段階の被験薬の場合について,抗癌剤第II相試験における治験事故に関する裁判例は,患者を被験者とする臨床試験は,専門的科学的検討を経て策定された治験計画(プロトコール)に基づき,被験者保護に配慮し慎重に実施される必要があり,特にプロトコール中被験者保護の見地から定められた規定に違反する行為は,特別の事情がない限り,違法と評価されると判示した.治験薬については,プロトコール中の被験者保護の見地から定められた規定が,医師の過失の原則的基準となると考えられる.
2.非適用薬剤
 厚生労働省の認可は医薬品の公法的規制・保険医療適用上の基準であり,司法上の医師患者関係を直接に規律するものではなく,当該疾患に対する使用が厚生労働省により認可されていない薬剤の投与でも,患者に対して直ちに違法となるわけではない.標準的治療法の確立していない種類の疾患に対しては,十分な医学的根拠がある場合に限り,その疾患に適用の認められていない薬剤の使用も許されるといえる.ただし,未認可薬剤の使用にあたっては,薬剤投与量・投与方法についての十分な検討,的確な副作用対策が不可欠であり,また,薬剤投与の効果や安全性が公的確認を得ていない点を含め,通常の場合に比し一層慎重なICが必要である.同様に,保険医療の使用基準とは異なる薬剤投与であっても,その許容範囲内として,保険診療と評価可能な場合もある.この場合,記載された用法と異なる用法で使用するには,(1)記載された用法と異なる用法が,必要不可欠であることの十分な根拠があり,(2)予定された用法と同等の効果を持ち,(3)副作用などの点において記載された用法と実質的に同一であることが明らか,という条件が必要とされる.
3.医薬品の臨床試験による健康被害に関する医療側の責任
 医療過誤としては,主としてプロトコールからの逸脱,有害事象監視懈怠,不適切な有害事象への対処が問題となる.一方,医薬品企業の責任としは,市販薬の場合と同様な不法行為責任(民法709条)・製造物責任(製造物責任法1条)に加えて,治験では補償責任(GCP14条)が問われる.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2) 151-151, 2003


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