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第117回学術集会(平成21年6月14日(日))

【シンポジウム2】
不育症の診断と治療
染色体検査とその対応


杉浦 真弓
名古屋市立大学産婦人科教授


 不育症については標準的検査,治療法がないのが現状である.一般臨床病院でどこまで検査を行うべきかについては,日本産婦人科学会ガイドラインにも示されているが,エビデンスレベルの高い研究が少ないのが実情である.
 不育症は繰り返す流死産によって生児を得られない状態であり,習慣流産は3回以上連続する流産と定義されている.本邦における習慣流産頻度は1.5%,不育症は6.1%程度の頻度と推測している.既往流産回数,女性の加齢が危険因子であることは明らかである.
 原因は母体側に存在する場合と胎児異常に分類できる.母体側原因としては抗リン脂質抗体症候群(5-15%),子宮奇形(3.2%)はガイドライン推奨レベルAである.黄体機能不全23%,糖尿病1%,甲状腺機能低下10%などの内分泌異常がみられるが,黄体機能不全に対するホルモン補充の有効性は確証が得られていないため,推奨レベルCとされている.免疫異常,炎症,遺伝子多型,凝固異常,精神的ストレスなどはまだ研究的である.本邦で長い間行われてきた夫リンパ球免疫療法は,その意義は否定的であり,米国FDAは研究目的以外では実施しないことを勧めている.
 一方,胎児側原因として夫婦染色体転座(4.5%),胎児染色体数的異常は明らかである.胎児染色体数的異常は1回の流産の約70%に見られるが,偶然起こることであり,不育症の原因としては考えられてこなかった.しかし私たちは不育症患者においても約50%に異常がみられることを2000年に報告し,胎児染色体異常が不育症においても重要な原因のひとつであることを明らかにした.最近,マイクロアレイCGH法を用いた染色体分析ではG分染法で判明しなかった微細な構造異常が存在することが明らかとなった.それらの報告によれば胎児染色体構造異常は80%以上にみられるという.単純計算でも2回続く確率は64%,3回では51%であり,つまり,既往流産3回の患者の51%が胎児の先天異常と推測することができる.遺伝子異常,エピゲノム異常を含めればさらに胎児側の異常は高頻度であろう.名古屋市立大学での検討で薬物投与せずに2回流産なら76%(444/582),3回70%(83/118),4回79%(19/24),5回50%(3/6)が生児獲得できている.特に胎児染色体異常が確認された場合の次回妊娠成功率が高いことも証明している.不育症患者の85%が累積成功しており,流産を繰り返しても出産可能であることを説明し,精神的ケアをすることが最も重要と考えている.
 本講演では夫婦染色体転座,胎児染色体異常による不育症の現状を概説させていただく.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(2) 131-131, 2009


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