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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))

【特別講演】
宇宙生殖医学の幕開け


若山 照彦1,2
山梨大学生命環境学部1, 理化学研究所発生・科学総合研究センター2


 1969年に人類が初めて月に降り立ってから40年以上たち,現在では国際宇宙ステーションに半年以上滞在することも可能となった.今後人類の宇宙活動はさらに拡大し,やがてスペースコロニーやほかの惑星で生活する時代がやってくるであろう.しかし,宇宙空間や地球以外の惑星では,宇宙放射線や重力の違いなど,地球とは全く違った環境が待ち受けている.そのような厳しい環境でも地球生まれの生物は果たして生き延び繁栄していくことができるのだろうか.これまでに行われた動物の生殖に関係する宇宙実験は,主に魚類や両生類についてである.それらの動物の卵子には上側に動物極,下側に植物極があり,上下を決めるために重力を利用しているはずだが,無重力空間でも地上とほぼ同じ成績で発生することが実際の宇宙実験により確かめられた.そのため極性が無いと考えられている哺乳類の卵子ならば無重力の影響はより少ないものとなり,哺乳類も宇宙で受精,発生および出産することが可能だと考えられていた.しかしメダカやイモリより高等な頭脳を持つマウスやラットは環境の変化に対してストレスを受けやすく,宇宙用に開発された完全自動飼育装置内では,たとえ地上で飼育しても繁殖どころか健康を維持することすら難しい.そこで凍結胚を宇宙へ運び,宇宙ステーション内で解凍し培養する実験も試みられたが,胚操作に不慣れな宇宙飛行士が無重力空間で胚の解凍,洗浄処理をするのは無理だったらしく失敗に終わっている.そのため,現在では哺乳類の生殖に関する宇宙実験は全く行われなくなってしまった.  そこで我々は地上で無重力環境を再現できる3D-クリノスタットという装置を利用してマウスの体外受精,および4日間の胚培養を試み,胚の受精および発生における無重力の影響を調べた.その結果,無重力環境下では胎児より胎盤側に悪影響があり,出産率が大きく低下してしまうことが明らかとなった(Wakayama et al., PloS One, 4:e6753).胎盤は哺乳類特有の臓器であり,哺乳類で宇宙実験をしない限りその影響を調べることは出来ないだろう.一方我々は2013年7月に,凍結乾燥されたマウス精子を宇宙ステーションへ打ち上げる予定である.宇宙で最長2年間保存してから持ち帰り,顕微授精で産仔を作出し,精子への宇宙放射線の影響を調べることを計画している(2010年に採択されたJAXAの公募研究).また我々は,宇宙飛行士にも出来る,胚の融解,洗浄,培養装置を開発中である.本セミナーでは哺乳類の宇宙生殖実験の歴史と我々の研究について紹介する.


関東連合産科婦人科学会誌, 49(3) 384-384, 2012


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