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第124回学術集会(平成24年10月28日(日))

【一般演題】
妊婦一過性大腿骨頸部骨粗鬆症(TOHP:Transient Osteroporosis of the Hip in Pregnency)の1例


杉原 武, 市田 宏司, 鎌田 英男, 手島 映子, 川田 龍太郎, 梅澤 幸一, 松本 泰弘, 司馬 正浩, 笹森 幸文, 木戸 浩一郎, 梁 栄治, 綾部 琢哉
帝京大学医学部産婦人科


【緒言】妊娠,産褥期における腰痛,股関節痛の訴えをしばしば経験する.妊娠中期から腰痛,右股関節痛が出現し,歩行困難となったTOHPの一例を経験した.【症例】41歳0経妊0経産.妊娠25週から右足関節から足背部の痛みが出現し,妊娠31週頃から右股関節痛も出現,妊娠35週2日,腰痛強く,自立歩行困難となり,入院となった.下肢超音波検査では深部静脈血栓症(DVT)は否定的であった.妊娠35週3日,腹緊増強したためterminationの方針とし,骨盤位のため緊急帝王切開術を施行した.児は2,436g,男児,Apgar score 8/9,UApH 7.307で早産児のためNICUに入院.産褥の単純X線撮影で右大腿骨頭の低吸収像を認め,MRI T1強調画像で右大腿骨頭から頸部の低信号,T2強調画像で同部位に著明な高信号を認めTOHPを疑った.歩行器によるリハビリテーション・右下肢完全免荷で,2か月半で右股関節運動痛は消失し,4か月でその他の症状やMRI上の異常所見は消失した.【考察】TOHPは妊娠中期・後期に発症する大腿骨頸部を主病変とする骨粗鬆症で,病因は一過性の虚血,閉鎖神経の圧迫などが報告されているが,不明な点も多い.大腿骨頭・頸部の骨萎縮性変化を特徴とし,鑑別診断として妊娠後骨粗鬆症・妊婦大腿骨頭壊死症がある.本例は妊娠後期に発症し,症状が局所的であることと,単純X線・MRI所見からTOHPと診断した.【結語】妊娠,産褥期における股関節痛・腰痛はマイナートラブルとして対応することが少なくない.TOHPは予後良好な疾患であるが,妊娠大腿骨頭壊死症やDVT等の予後不良な疾患と臨床像が類似するため,鑑別が必要である.


関東連合産科婦人科学会誌, 49(3) 435-435, 2012


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