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【症例報告】
術前に心房中隔欠損症を介して奇異性塞栓症をきたした卵巣明細胞腺癌の一例


安田 元己, 大森 真紀子, 多賀谷 光, 端 晶彦, 平田 修司
山梨大学医学部産婦人科


 卵巣癌,とくに明細胞腺癌では静脈血栓症のリスクが高いことが知られている.今回,われわれは卵巣明細胞腺癌の症例で,下肢深部静脈血栓に対し抗凝固療法を開始したにもかかわらず,多臓器梗塞をおこし,心房中隔欠損を介した奇異性塞栓と診断された稀な症例を経験したので報告する.症例は62歳,3経妊2経産.主訴は腰痛と夜間頻尿で,左卵巣に12 cm大の腫瘍を認め,卵巣癌の疑いで入院した.下肢血管エコーにて両側ヒラメ筋静脈に血栓を認め,ヘパリンの投与を開始した.翌日,前胸部痛が出現し,CT検査で肺塞栓症は認めなかったが,腎・脾梗塞を認めた.その翌日,CKの上昇と心電図でのSTの上昇が出現し,急性心筋梗塞と診断された.心エコーにて心房中隔欠損を認め,奇異性塞栓症と診断された.ヘパリン投与,心臓カテーテルによる冠動脈形成術を行ったのちに,下大静脈フィルターを留置し,卵巣癌に対し手術を行った.術後診断は明細胞腺癌,pT1c(b)NxM0で,術後に化学療法(CPT-11, CDDP療法)を6サイクル施行した.抗凝固療法を行いながら術後1年経過しているが,卵巣癌の再発や転移,静脈血栓症の再発もみられていない.心房中隔欠損は稀だが,卵円孔開存の有病率は15〜35%と報告されており,深部静脈血栓の存在下では奇異性塞栓を発症しうることが指摘されている.卵巣癌などの静脈血栓のリスクが高い症例では,奇異性塞栓も起こりうることを念頭において管理する必要がある.

Key words:paradoxical embolism, venous thromboembolism, ovarian cancer, atrial septal defect, acute myocardial infarction

関東連合産科婦人科学会誌, 50(4) 687-693, 2013


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