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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【シンポジウム4】
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの活用法と将来展望
川名 敬
東京大学医学部産科婦人科学
ヒトパピローマウイルス(以下HPV)が子宮頸癌の発がんに深く関与していることがわかって以来,この四半世紀の間HPVワクチンの研究が精力的に行われてきた.最近になってようやく初のHPVワクチンが製剤化され欧米で認可された.そしてこのHPVワクチンがわが国へも導入されようとしている.しかしこの現行のHPVワクチンにはいくつかの課題があり,認可されたとは言えまだ第一歩を踏み出したばかりである. 女性生殖器へのHPV感染自体は極めて庶民的な“common disease”であると言われている.多くの場合は一過性のウイルス増殖(一過性感染)であってその後は潜伏するか消滅する.一部にウイルス増殖が持続すること(持続感染という)があり,その場合に発がんのリスクが高くなる.持続感染を起こしやすいのがハイリスク型HPVであり,それには10種以上が含まれる.現行のHPVワクチンがカバーできるのは2種類(16,18型)だけである.現行のワクチンでは,16,18型以外のハイリスク型HPV感染は予防できない.したがって現時点では,HPVワクチンを接種しても子宮癌検診を受けなくて良いとは言い難い. それ以外にも,ワクチン効果の持続期間がまだわかっていないこと,スメア異常があるような既感染者は対象外であること,比較的高価であること,など現行のHPVワクチンにはいくつかの課題がある.そこで本発表では,わが国における現行のHPVワクチンの活用法ともに今後期待される次世代のHPVワクチンの開発状況を紹介したい.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
143-143, 2007
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