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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))

【一般演題】
塞栓症
帝王切開術後に肺塞栓症を疑った産褥心筋症の1例


近藤 理絵, 高木 靖, 窪田 文香
諏訪赤十字病院産婦人科


 産褥心筋症は発症頻度が3000〜15000分娩に1例という極めて稀な疾患で,約10%が妊娠後期に発症する.正常妊婦でも心不全に類似した症状が見られる時期であるため,見落とされやすく,また肺血栓塞栓症の症状と共通している.症例は心疾患の既往の無い33歳の初産婦で,妊娠24週頃から胎児発育遅延(IUGR)が認められていた.妊娠26週に当科へ紹介(帰省)となり,IUGR(708g:−2.2 SD)の診断にて精査目的で入院となったが,明らかな原因は認めなかった.しかし,妊娠31週より妊娠高血圧腎症を発症し,治療後も収縮期血圧170台,蛋白尿,全身性浮腫を認め,妊娠33週に帝王切開術を施行した.術後1日目の歩行も問題なく行えたが,2日目に突然の呼吸苦を訴え,SpO2 86%,140/分の頻脈を認めたため,肺塞栓症を疑い胸部造影CTを施行した.血栓は描出されなかったものの,特徴的な臨床経過や肺水腫,胸水,無気肺の所見から,肺塞栓も否定できず,ヘパリン,AT-3製剤,利尿剤,抗生剤等にて治療した.治療開始後3日目に肺水腫は改善したが,心拡大や頻脈,強い全身倦怠感は持続したため,心臓超音波検査を施行したところ,EF35%と心不全状態であり,産褥心筋症と診断された.抗凝固療法を中止し,降圧薬の内服等を行い,術後11週目に心機能は正常化した.周産期に突然の呼吸苦や頻脈を認めた際,肺血栓塞栓症を疑うことは周知の事となった.しかし本症例のように,心不全でも類似した症状や所見を認めるため,疑わしい場合は積極的に早期の心臓超音波検査を行うべきであると考えられた.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2) 161-161, 2007


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