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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
塞栓症 下大静脈フィルター留置および抗凝固療法による管理で良好な経過を辿った妊娠中期発症の肺血栓塞栓症の一例
手塚 彩子, 宮越 敬, 岸見 有紗, 松岡 美杉, 森定 徹, 西村 修, 矢久保 和美, 福井谷 達郎
さいたま市立病院周産期母子医療センター産婦人科
【緒言】肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は妊産婦死亡の主たる原因の一つであり,発症後早期に適切な治療を要する疾患である.今回我々は妊娠中期に発症したPEを伴う静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)に対し,下大静脈フィルター留置および抗凝固療法による周産期管理を行った症例を経験したので報告する.【症例】30歳女性,0経妊0経産.近医における妊娠経過は良好であった.妊娠26週1日自宅における約5時間にわたる座位での作業後,就寝時に突然の呼吸困難と動悸を認め呼吸不全の診断にて当院に搬送入院となった.血液検査にてD-dimerは高値を示し,心臓超音波検査では右心負荷を認めた.また,胸部造影CT検査にて左右肺動脈に造影欠損像を認め,PEと診断した.PEの再発は生命予後を極めて不良にするものと考え,循環器科との協議の上,直ちに永久型下大静脈フィルターを留置しヘパリンによる抗凝固療法を開始した.なお,右下肢に腫脹・疼痛を認め,大腿静脈に血栓が観察された.その後切迫早産症状を認めた以外は経過良好であり,発症4週後には心機能も改善した.妊娠36週0日陣痛発来とともに抗凝固療法を中止し分娩経過良好にて正常分娩に至った.なお,諸検査では明らかな血栓性素因は検出されていない.【考察】本症例では妊娠中の長時間の同一姿勢による静脈うっ帯がPE/VTE発症の誘因と推測される.PE/VTEの多くは産褥期に発症していることが報告されているが,妊娠全期間を通して本疾患の発症予防に関する理解を深めるよう妊婦指導を行っていく必要があるものと考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
162-162, 2007
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