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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
塞栓症 大腿骨頸部骨折による長期臥床中に肺静脈血栓塞栓症を発症した妊婦の1例
田丸 俊輔, 加村 和雄, 板倉 敦夫, 清水 基弘, 武居 智信, 中山 真人, 羽生 真由子, 難波 聡, 大澤 洋之, 石原 理
埼玉医科大学産婦人科
【要旨】我々は,妊娠14週に交通外傷のため大腿骨頸部骨折を生じ,保存的治療中に肺静脈血栓塞栓症を併発し,ショックに至るも保存的治療で改善した1症例を経験したので報告する.【症例】症例は31歳初産婦.妊娠14週4日,乗用車との接触事故で左大腿骨頸部骨折を生じ当院入院となった.外科的治療による胎児被爆のリスクを考慮し,左下肢の固定,牽引での保存的治療を行った.静脈血栓予防のために,健側下腿にのみ弾性ストッキングを着用していたが,ヘパリン等による抗凝固療法は施行していなかった.入院16日目,排便後に呼吸困難,嘔気,血圧,酸素飽和度の低下,頻脈を認めた.さらに動脈血ガスでのPO2の低下,呼吸性アルカローシス,心エコーの右心負荷所見,造影CTで両側肺動脈本幹の血栓像を認め,急性肺静脈血栓塞栓症と診断した.また左大腿静脈に可動性のある血栓様エコーを認めた.発症2時間でショック状態となったため,直ちにCICUでの経皮的心肺補助装置を含めた全身管理のもと,血栓溶解療法,抗凝固療法を開始し,全身状態改善を認めた.発症後18日目にIVCフィルターを挿入して,妊娠19週4日(発症後20日目)に本人,夫と十分相談の上ゲメプロストによる人工妊娠中絶を行った.発症後26日目,骨折に対する外科的治療を施行し,その後は抗凝固療法を継続しながら発症後111日目に退院となった.【考察】今症例は血栓症のリスク因子を多く有していたが,ガイドラインでは血栓症予防の標準的治療は確立されておらず,抗凝固療法は行っていなかった.今症例のようなハイリスク症例の血栓症予防対策の確立も必要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
163-163, 2007
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