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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
婦人科疾患その他1 術後にヘパリン起因性血小板減少症(HIT)をきたした1症例
雨宮 希, 和田 麻美子, 正田 朋子, 須波 玲, 三宅 麻喜, 端 晶彦, 平田 修司, 星 和彦
山梨大学医学部付属病院産婦人科
現在,術後の深部静脈血栓症・肺塞栓症の予防のためヘパリンが広く使用されている.ヘパリンの重大な副作用にヘパリン起因性血小板減少症(以下HIT)があるが,その認識は本邦では必ずしも十分ではない.HITの特徴は血小板減少と血栓の合併であり,死亡率も高い.今回我々は,術前よりヘパリン持続静注を行っていた悪性腫瘍患者で,術後6日目(ヘパリン投与開始後10日目)にHITをきたした症例を経験したので報告する.症例は81歳,0経妊0経産.両側胸水貯留と約20cm大の卵巣腫瘍のため当科紹介となった.術前スクリーニングの下肢静脈エコーにて両下肢に血栓を指摘された.新たな血栓の予防のため手術3日前よりヘパリンを持続静注(500U/hr)し,腹式単純子宮全摘術+両側付属器切除+部分大網切除を施行した.病理組織学的検討の結果,左卵巣癌stageIc(b)と子宮体癌stageIcの重複癌(組織型はともに類内膜腺癌G1)の診断となった.術後3日目,血小板数21.0万/μlであったが,術後6日目に3.3万/μlと急激に減少した.ヘパリンによる血小板減少を疑い,ヘパリンからワーファリンに切り替えたが,血小板数は増加しなかった.新たな血栓形成の可能性を考え造影CTを施行したところ,血栓の拡大と肺塞栓を認めた.臨床経過よりHITが疑われたため,下大静脈フィルターを挿入し,抗トロンビン剤持続点滴による抗凝固療法を開始した.血液中の抗ヘパリン-血小板第4因子複合体抗体は強陽性であった.その後,血小板数は改善し,術後43日目に退院となり,現在は外来フォロー中である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
165-165, 2007
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