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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
子宮頸癌(2) 腫瘍塞栓により急激な経過をたどった子宮頚癌の一例
國井 優衣子, 須賀 新, 宮国 泰香, 山田 由季, 加塚 有紀, 金田 容秀, 鈴木 千賀子, 寺尾 泰久, 荻島 大貴, 竹田 省
順天堂大学産婦人科
(諸言)我々が臨床で経験する肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は,下肢・骨盤内の静脈血栓に起因するものが殆どである.その他の原因として,脂肪・空気・腫瘍等があげられる.今回,我々は塞栓子として腫瘍が原因となり,急激な経過をたどった子宮頚癌の一例を経験したので報告する.(症例)59歳,0経妊0経産,家族歴・既往歴ともに特記事項なし.1ヶ月間持続する不正性器出血を主訴に近医婦人科受診.内診上,子宮頚癌が疑われ,総合病院紹介受診.子宮膣部細胞診class5,組織診で扁平上皮癌の診断を得た.内診で子宮傍結合織浸潤を伴う約5cm大の腫瘍を認め,腹部CT上両側水腎症を認めたため,stage3bの診断でchemo-radiation予定であったが,FDP 34.2μg/ml,FDP-D 18.8μg/mlと高値であり,PEを疑い当院紹介受診.動脈血液ガス検査で,pH 7.469,PaO2 50.3mmHg,PaCo2 33.1mmHgと低酸素血症認めた.入院後の胸部CT上,両側末梢陰影欠損,肺血流シンチグラフィーで,両側下肺野の欠損認め,PEの診断となった.血栓を疑いヘパリン20000単位/日を開始したが,呼吸状態悪化したため,人工呼吸器管理となった.腫瘍による塞栓を疑い気管支洗浄細胞診(BALB)施行,class2と腫瘍によるPEの確定診断を得られず,入院後10日目に循環動態悪化し永眠となった.剖検の結果,肺野全体に広がる多発肺動脈腫瘍塞栓を認め,子宮頚癌によるPEとの確定診断を得た.実質臓器には転移を認めなかった.(考察)今回,腫瘍が原因で,肺塞栓症を発症し,急激な経過をたどった子宮頚癌の一例を経験した.腫瘍塞栓に対する有効な診断法・治療法は殆ど報告されておらず,抗癌剤治療について検討する必要があった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
168-168, 2007
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