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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
子宮体部良性腫瘍(2) 卵巣嚢腫との鑑別に苦慮した嚢胞変性を伴う子宮平滑筋腫の一例
田島 敏秀, 西尾 浩, 水野 嘉朗, 寺西 貴英, 福庭 一人, 眞田 利男
総合太田病院産婦人科
子宮平滑筋腫は日常診療上頻繁に遭遇する間葉系子宮腫瘍であり,通常典型的な超音波所見を呈すると考えがちである.しかしながら,変性を伴う場合,その超音波所見は非常に多彩であり,他疾患との鑑別に慎重を要する場合がある.今回我々は卵巣嚢腫との鑑別に苦慮した嚢胞変性を伴う子宮平滑筋腫の一例を経験したので報告する.症例は60歳(3経妊3経産)卵巣腫瘍精査加療目的にて当科紹介初診,経腟超音波断層法,MRIにて子宮底部に4cm大の子宮筋腫ならびに右付属器領域に8cm大の辺縁平滑な嚢胞性病変を認め,右卵巣嚢腫の術前診断の下,腹腔鏡下手術を施行した.臍部からダイレクト法にて第一トロッカーを挿入し,左右下腹部に第二,三トロッカーを型の如く挿入し,これに加えて,臍部右側方10cmに第四トロッカーを挿入した.第四トロッカーの視野にて帝王切開創直下の広汎な大網癒着を剥離した.子宮はS状結腸,大網と癒着し一塊となっており,長時間の癒着剥離を要した.剥離後子宮底部の陳旧性子宮筋腫に連続した約8cm大の嚢胞性病変を認めたため,腹腔鏡下腫瘍摘出術を施行し腹腔内の十分な洗浄を行った.両付属器に所見は認めなかった.腫瘍の割面は白色調で嚢胞状を呈しており,充実成分は認めなかった.腫瘍内容は一部出血を伴うしょう液性で200mlであった.組織学的には嚢胞壁は線維化・硝子化が強く,肉芽性となっており,大部分平滑筋組織から構成されており,嚢胞変性を伴う子宮平滑筋腫と診断された.術後経過は順調で腸閉塞を発症せず術後5日目に退院となった.本症例から卵巣嚢腫の鑑別疾患に嚢胞変性を伴う子宮平滑筋腫も考慮することが肝要であった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
177-177, 2007
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