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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
合併症妊娠(1) 同一妊娠期間中に破裂を繰り返した脳動静脈奇形合併妊娠の1例
早田 英二郎1), 水本 賀文1), 吉川 智之1), 田中 陽子1), 村上 充剛1), 古谷 健一2)
自衛隊中央病院産婦人科1), 防衛医科大学校産婦人科2)
【緒言】妊娠合併症としての脳動静脈奇形(以下脳AVM)からの出血はまれであるが,頭蓋内出血での妊産婦死亡率は40〜50%に達し,妊婦死亡原因の5〜12%を占める.今回,我々は同一妊娠期間中に2度破裂し,厳重な管理の結果,母児ともに良好な経過をとった症例を経験したので報告する.【症例】27歳,1経妊1経産.15歳時より当院脳外科にて脳AVMをフォローされていた.前回妊娠時は自然分娩にて出産.今回妊娠経過も順調であったが,32週0日,後頭部痛と嘔気を自覚し当院へ救急搬送され,CT上脳AVM破裂による頭蓋内出血と診断した.神経症状がないため,脳外科と協議し保存的に厳重管理とした.その後入院管理にて順調に経過していたが,36週4日に再度後頭部痛と嘔気があり,CT上にて同部位からの再破裂と診断し,37週6日に帝王切開にて2400gの男児を出産.その後産褥期も良好に経過している.【結論】脳AVM合併妊婦については,妊娠後期の循環血漿量・心拍出量の増加がAVM破裂のリスクになるとの報告もあり,再出血での死亡率は50〜68%と致命的な経過をたどることがある.分娩時期については母児の状態が良好ならば37週まで待つことが原則であるが,児が体外生活可能な週数まで成育した段階で速やかに娩出すべきとの意見もあり,一定の見解が得られていない.今回の症例では神経症状がなかったため保存的に管理したが,妊娠後期に2度の破裂をきたした.したがって,破裂後の脳AVM合併妊婦において最適な分娩時期の計画およびそれに必要な出血リスクの評価が重要であり,そのためには,今後同様の症例の集積・検討が必要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
180-180, 2007
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