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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
合併症妊娠(2) 非閉塞性腸管虚血症と考えられた帝王切開術後敗血症の一例
木村 奈央, 佐藤 卓, 田中 守, 青木 大輔, 吉村 泰典
慶應義塾大学産婦人科
【緒言】非閉塞性腸管虚血症は腸間膜動脈の血管攣縮によって引き起こされ,腸管虚血から壊死に至る可能性がある重篤な疾患である.今回我々は,帝王切開術後に多臓器不全(MOF)を発症し,同疾患と考えられた症例を経験したので報告する.【症例】37歳2経妊1経産.他院にて妊娠29週より双胎・切迫早産のため入院管理中であった.35週2日,PIHの診断で緊急帝王切開分娩.術後2日目に呼吸困難と,発熱,頻脈が出現し,肺水腫の診断で当院に救急搬送となった.来院時,血圧:120/60mmHg,体温:39.6℃,脈拍数:185bpm,呼吸数:36回/分であり,腹部膨満とRebound tendernessを認めた.血液の乳酸値は3.1mmol/Lと高値を示し,CTにて両側の胸水・腹水貯留,腸管の広汎な浮腫を認めたため.汎発性腹膜炎と診断され,開腹術を施行した.腹腔内に淡血性腹水と腸管の著明な浮腫を認めたが,明らかな腸管の壊死の所見は認められず生理食塩水にて洗浄の上ドレーン留置を行った.術後,抗生剤治療と抗DIC治療を開始した.来院時の血液培養および術中採取された腹水からABPC耐性E.Coliが検出された.術後5日目より.血中の乳酸値も低下し,全身症状の改善も認められ術後49日目に軽快退院した.【結語】本症例は非閉塞性腸管虚血症により著明な腸管浮腫と高乳酸血症が引き起こされると共に腸内細菌の血液内移動が引き起こされ,敗血症に伴うMOFを呈したものと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
182-182, 2007
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