|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
合併症妊娠(3) Schonlein-Henoch紫斑病合併妊娠の1症例
長谷川 ゆり, 松田 秀雄, 芝崎 智子, 川上 裕一, 吉田 昌史, 田中 雅子, 吉永 洋輔, 古谷 健一
防衛医科大学校病院産婦人科
緒言:Schonlein-Henoch紫斑病は主に小児期に発症し,その病態はIgA免疫複合体による全身の血管炎である.今回,妊娠中にSchonlein-Henoch紫斑病を発症し,紫斑病性腎炎に至った症例を経験したので報告する.症例:26歳,初産.妊娠18週より下肢の紫斑が出現した.妊娠19週1日,当院皮膚科を受診し,Schonlein-Henoch紫斑病と診断された.消化器症状を認めたため,当科へ緊急入院した.ASO上昇により溶連菌感染を疑い抗生剤を投与したところ,紫斑及び消化器症状は一旦改善した.しかし,紫斑と消化器症状の再燃を認めたため,20週2日よりプレドニゾロン(PSL)30mg/dayを開始した.23週1日,尿蛋白が0.8g/dayと上昇を認め,紫斑病性腎炎の発症と考えられた.紫斑は徐々に軽快し,尿蛋白量は1g/day前後で推移した.26週2日よりPSLを25mg/dayに減量したが紫斑の増悪はなく,32週1日よりPSL20mg/dayに減量した.一方,31週2日より切迫早産に対し子宮収縮抑制剤を開始した.34週より単発的な血圧の上昇を認め,35週より尿蛋白が4g/dayと急増し,紫斑の再燃も認めた.35週5日,陣痛発来し35週6日に経腟分娩となった.児は2355g,女児,Apgar Score 9点(5分).分娩後尿蛋白量は2g/day前後であり浮腫の出現と紫斑の増悪を認めたため,PSL40mg/dayに増量し内科へ転科となった.考察:Schonlein-Henoch紫斑病は70〜80%の症例では良好な経過をとるが,腎不全へ発展する例もある.本症例はPSL投与により一旦寛解したが,血圧上昇の後蛋白尿は急増し分娩後も紫斑の再燃を認めた.妊娠中または分娩後に増悪する原因は不明であるが,本症例のように血圧の上昇が腎炎増悪の一素因となりうるかもしれない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
184-184, 2007
|