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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))

【一般演題】
合併症妊娠(3)
急性妊娠脂肪肝の1例


花岡 由里子, 佐近 普子, 保倉 宏, 本道 隆明, 木村 薫
厚生連篠ノ井総合病院産婦人科


 急性妊娠脂肪肝は稀な疾患ではあるが,発症した場合には母児ともに死亡率が高いため,産科救急疾患の中で注意すべきもののひとつである.今回我々は分娩後に急性妊娠脂肪肝と診断し全身管理を行った1例を経験した.症例は32歳の1回経産婦.前回妊娠分娩歴に特記すべき異常は認められず,今回も妊娠経過中は順調であった.妊娠36週0日に腹部緊満感および少量の性器出血を主訴に外来を受診し,子宮口が3cm開大していたため,切迫早産,複臀位の診断で入院となった.陣痛は急速に増強し,子宮口が9cmまで開大したところで自然破水したが,その直後より100回/分以下のdecelarationが持続した.急速遂娩が必要と判断し,クリステレル圧出法を併用して骨盤位牽出術を行った.児は2434gの男児でApgar scoreは1分後1点,NICU入院となったが同日夜には状態は安定し以後の経過は順調であった.一方,母体は皮膚や眼球結膜の黄染を認め嘔気と軽度の意識混濁があった.分娩後に血液検査を行ったところAST,ALT,Bil,UA,NH3,WBC等の異常高値を認めたが,高血圧や血小板低下はなく,臨床症状から急性妊娠脂肪肝と診断した.乏尿,全身浮腫も出現したためFOY,ドパミンを投与した.産褥2日目以降は黄疸,嘔気,意識状態は改善傾向となり,血液検査でも全般的に改善傾向が認められた.腹部エコー,CTで脂肪肝を認め,確定診断を得るために産褥10日目に肝生検を施行し脂肪滴が確認できたため急性妊娠脂肪肝と確定診断した.患者は産褥15日目に退院となり,以後1ヶ月健診時にも異常は認められず経過良好である.本症例は発症とほぼ同時に分娩となったため,肝不全や腎不全に陥ることなく母児ともに救命できたと考える.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2) 186-186, 2007


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