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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
合併症妊娠(4) 分娩を契機に発症した糖尿病の一例
堀谷 まどか, 松見 泰宇, 竹村 由里, 大貫 裕子, 中林 稔, 村田 照夫, 西井 修
帝京大学医学部附属溝口病院産婦人科
【症例】33歳.3経妊1経産.既往歴:特になし.家族歴:両親に高血圧あり.糖尿病歴なし.経過:妊娠8週より当科にて妊婦健診施行.妊婦検診中は尿糖(±)〜(−),分娩まで尿蛋白(+)持続.中期検査の血糖は85mg/dlであった.妊娠38週6日に前期破水のため入院し,翌日陣痛誘発施行,正常経膣分娩となった.産褥3日目は尿糖(−),尿蛋白(−).産後一ヶ月検診では尿糖(−),尿蛋白(+)であったが,産褥18週より口渇出現.産褥19週目にはめまいなども出現したため,当院耳鼻科を受診.血糖820mg/dl,血清電解質に異常を認めたため糖尿病ケトアシドーシスの診断で入院となった.ただちに大量生理食塩水補液,インスリン持続静脈内投与開始.翌日には症状改善されたため強化インスリン療法に切り替えとなった.HbA1cは9.9%と高く,抗GAD抗体1454.2U/ml,血中CPR 0.3未満ng/ml,尿中CPR 3.5μg/dayであったことから1型糖尿病と診断され,持続的なインスリン療法が必要と判断された.血糖コントロールは徐々に良好となったため退院となった.本症例は高血糖症状の出現から,DKA発症までの期間が一週間と短いものの,HbA1cが高値であったことから,臨床症状出現以前からの高血糖が推測された.妊娠中は糖代謝異常は認められず,本症は分娩直後に発症した可能性が示唆された.妊娠中は2型糖尿病に類似する病態のGDM(gestational diabetes mellitus)が多いが,本症例は抗GAD抗体及び,甲状腺関連の自己抗体を伴うことから,自己免疫性1型糖尿病であると考えられ,妊娠(分娩)に伴う免疫環境の変化が,潜在する自己免疫状態を顕在化し,1型糖尿病の発症を誘導したと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
186-186, 2007
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