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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
合併症妊娠(4) 妊娠後期に発症した劇症1型糖尿病の一例
玉城 英子, 土居 幹, 増田 良平, 加藤 良樹
国家公務員共済組合連合会横須賀共済病院産婦人科
劇症1型糖尿病は糖尿病性ケトアシドーシス(以下DKA)を初発症状とし,妊娠中に発症すると母児とも予後不良とされる.今回妊娠後期に劇症1型糖尿病を発症し,その発症に塩酸リトドリンが深く関与したと考えられる症例を経験したので報告する.【症例】24歳0経妊0経産 妊娠初期より前医にて経過観察されていたが,妊娠31週3日子宮収縮を認め塩酸リトドリン経口投与開始する.改善傾向なく31週5日より前医へ入院し,塩酸リトドリン経静脈投与を開始する.32週0日 塩酸リトドリン増量するも子宮収縮収まらず,またCTG上non-reassuring patternを認め,当施設に緊急母体搬送となった.搬送後腹痛の訴え強くまた胎児徐脈を認めたため,直ちに全身麻酔下にて緊急帝王切開となった.児は1706gの死産であったが胎盤に剥離徴候はみられなかった.母体は抜管後心室細動から心停止をきたしたが,蘇生に反応し,身体的および神経的障害なく回復した.その後行われた検査にてGAD抗体陰性なるもグルカゴン負荷試験でインスリンの分泌を認めず1型糖尿病と診断された.症例は妊娠経過中,前医で行われた血液検査および尿検査で糖尿病を示唆する所見はなかった.塩酸リトドリン経静脈投与直前の血糖値は76mg/dl尿糖(−)尿ケトン体(+)であったが,塩酸リトドリン経静脈投与開始2日目にあたる帝王切開施行直前の血糖値は429mg/dl血清K値5.9mEq/l,蘇生後血中ケトン体3500μmol/l以上とDKA発症を考えうるものであった.塩酸リトドリン投与前には糖尿病所見を認めず,投与後劇症1型糖尿病からDKAを発症した症例は稀有と思われる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
187-187, 2007
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