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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍2 周術期管理に苦慮した巨大卵巣腫瘍の1例
海野 洋一, 碓井 宏和, 楯 真一, 平敷 好一郎, 三橋 暁, 松井 英雄, 生水 真紀夫
千葉大学婦人科
【はじめに】巨大卵巣腫瘍は,術中・術後に循環器・呼吸器系の合併症を生じやすいため,厳重な管理が必要となる.今回われわれは重量約20kgの卵巣腫瘍症例を経験したので報告する.【症例】72歳,2経妊2経産.2年前より腹満感自覚していたが放置していた.19年1月上旬より急速に腹満感増強し,排尿困難・呼吸困難・歩行困難が出現し1月9日近医受診.巨大卵巣腫瘍と診断され入院となった.周術期の管理がハイリスクなため1月24日当院へ転送となった.入院時身長151cm,66kg,腹囲105cm.卵巣腫瘍は剣状突起下に及び,エコーおよびCTでは骨盤腔から上腹部にいたる巨大な二房性の腫瘍を認めた.胸部単純X線では腫瘍による圧迫のため横隔膜の著明な挙上が認められた.腹部膨満のため側臥位しかとれず,呼吸困難にて経鼻酸素投与が必要であった.腫瘍マーカーはCEA 27.4ng/ml,CA19-9 6690U/ml,CA125 236.2U/mlであった.緊急手術を検討したが凝固能異常および深部静脈血栓症の疑いがあり,腹満軽減目的に経腹的卵巣腫瘍内穿刺を行った.穿刺は24時間かけて約10L排出した.2月6日全身麻酔下で開腹術を施行.術中腫瘍の吸引に伴い20〜30mmHgの血圧低下がみられた.術後呼吸障害の発症が危惧されたため,挿管したままICUにて管理し翌朝に抜管した.また,1ヶ月以上歩行していなかったため術後リハビリテーションが必要であった.病理組織診断にて境界悪性粘液性嚢胞腺腫であった.【結語】本症例は術前に卵巣腫瘍穿刺を行って全身状態を改善させることにより充分な全身検索を行い,周術期の循環器・呼吸器管理をコントロールできた.巨大卵巣腫瘍の周術期管理について文献的考察を加えて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
217-217, 2007
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