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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍3 cytokeratin7/20を含む免疫染色にて卵巣類内膜腺癌との鑑別が容易となった大腸癌卵巣転移の1例
渡邊 昭夫1), 吉川 智之1), 村上 充剛1), 早田 英二郎1), 田中 陽子1), 喜多 恒和2), 水本 賀文1), 古谷 健一2)
自衛隊中央病院産婦人科1), 防衛医科大学校産婦人科2)
【緒言】大腸癌卵巣転移は,片側性で腫瘍径が大きい充実性成分を含む多房性腫瘤像を呈することが多く,卵巣類内膜腺癌,粘液性腺癌とMRI上鑑別困難で,組織学的にdirty necrosis,cribriform patternが特徴だが,卵巣類内膜腺癌でも認められることがあり,鑑別困難で誤診もしばしばあると言われている.【症例】64歳,2経妊2経産.主訴:血尿.既往歴:10ヶ月前,S状結腸癌StageIIIaに対し高位前方切除術,D2郭清施行.術前CEAを含め腫瘍マーカーの上昇なし.術後UFT-UZEL内服中.経過:CT上膀胱を圧排する骨盤内腫瘤を認め,膀胱鏡で粘膜面正常であった.上,下部内視鏡では腫瘤を認めなかった.MRI上充実性成分に不均一な造影効果のある,長径14cmの片側性多房性嚢胞性腫瘤を認めた.腫瘍マーカーはCA125:580U/ml,SLX:75.7U/ml,CEA:11.3ng/ml,CA19-9:4.8U/mlであった.手術所見は腹水約2000ml黄色調,左卵巣は小児頭大で腸管と癒着し,右卵巣は正常大であった.単純子宮全摘,両側付属器切除,虫垂切除,部分大網切除術を施行した.病理診断ではHE染色上S状結腸癌切除検体と類似していたが,卵巣類内膜腺癌と鑑別が困難な像であった.免疫染色で腫瘍細胞がCK7陰性/20陽性,vimentin陰性,CA125陰性で,CEAは内腔面に陽性でありS状結腸癌の転移と診断された.術後は外科にて化学療法(FOLFOX4)となった.【結語】本症例は画像や腫瘍マーカーから卵巣癌との鑑別ができず,組織学的にも類内膜腺癌と鑑別が困難な大腸癌の卵巣転移例であった.的確な術後療法の選択に際し,卵巣類内膜腺癌でCK7陽性/20陰性,大腸癌でCK7陰性/20陽性となることを活用した免疫組織診断は有用であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
219-219, 2007
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