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第113回学術集会(平成19年6月3日(日))
【一般演題】
婦人科疾患その他2 ワギニスムスの症例報告―性治療,不妊治療を経て,結婚14年,治療後10年で出産に至った症例―
中村 裕美, 岡嶋 祐子, 大川 玲子
(旧)国立千葉病院産婦人科
【はじめに】ワギニスムスは膣の外1/3の部分の筋肉に反復性または持続性の不随意性れん縮がおこり,性交を障害するものをいう.ほとんど心因性の疾患であり,行動療法を中心とした性治療の適応である.今回我々は,性治療,不妊治療を経て結婚14年,治療後10年で出産に至った一例を経験したので報告する.【症例】妻24歳,夫30歳で見合い結婚したが,性交ができず愛撫のみの性行為を続けていた.その後不正出血にて婦人科を受診した際,恐怖のため診察ができなかったことがきっかけとなり,当科性外来受診となった.すでに結婚後4年が経過していた.初診時は外陰部に触れただけで痛みを訴え,膣挿入は指,膣鏡ともに不可能であった.治療期間は10年に及んだ.まず2年間の行動療法で自分の指の先を膣内に挿入できるようになったが,思うように改善しないあせり等から,多くのストレス関連疾患が出現し,その後3年は精神科にて治療を行った.しかし,夫の強い挙児希望から性治療を再開し,陰茎を膣入口まで挿入できるようになった.その後黄体機能不全や卵管閉塞がみつかり,卵管開口術,人工授精を行ったが,最終的に体外受精,胚移植にて妊娠が成立した.妊娠32週〜36週まで切迫早産,羊水過多にて入院となったが,妊娠39週,3312gの女児を経膣分娩した.不妊治療の間に診察は楽に出来るようになり,妊婦健診中の診察や,分娩,会陰縫合は問題なく行えた.【結語】患者の強い挿入恐怖や過敏症が治療を困難にさせたが,不妊治療を含めすべての治療が症状の改善に貢献した.長期にわたる治療を支えたのは,治療を続ける精神力と夫のサポートと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 44(2)
226-226, 2007
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